酵母エキスとアミノ酸の違いは?添加物ではない酵母エキスは何者?


こんにちは。お宅の台所には酵母エキスって調味料は置いてますか?

ないよそんなの…。なにそれ?
酵母エキスとは、添加物ではなく食品扱いとなっているうま味調味料のひとつです。
あたり前ですが、「酵母エキスって何?」と聞かれて、すぐ答えられる人っていないと思います。
でも、よく口にしているはずです。下手したら毎日食べているかも。
「アミノ酸ってあの白い粉のことで、食品添加物でしょ」と、知っているママもいらっしゃいますよね。
ですが正直言って『食品扱いの酵母エキス』も、『食品添加物のアミノ酸』もそう違いありません。
「原材料欄の/(スラッシュ)以降が添加物という知識があっても、その前にある酵母エキスはノータッチだった…」
というあなたにも、
- 酵母エキスがどうアミノ酸と違いない物なのか?
- 酵母エキスの製造方法は?
- まだうま味調味料が隠れていた!「たんぱく加水分解物」のこと
など他のうま味調味料との違いは何かを知ってほしい!という記事です。
酵母エキスとアミノ酸の違い

この記事にたどり着いたあなたは、食品添加物に関心があって、原材料欄のチェックも日常になってきたのではないでしょうか?
そんな中気になる『酵母エキス』…かなりの頻度で見かけますよね。
酵母エキスもアミノ酸も、両者ともうま味調味料に間違いありません。
大きな違いは、分類上が食品添加物か、食品添加物ではない(食品)かの点です。
原料や作られ方に違いがあるものの、原料からうま味成分であるアミノ酸を何らかの処理をして取り出すということは同じです。
なんなら、全部ではありませんが酵母エキス製造の過程でアミノ酸(グルタミン酸ナトリウム)が使われることもあります。

それって酵母エキスも実質、添加物なのでは…?

そうですね。「エキス類はちょっと…」と気にされているナチュラルショップのお客様もいらっしゃいます。
そしてまだ隠れていたうま味調味料、『たんぱく加水分解物』についても後でご説明いたします。
調味料(アミノ酸等)とは


アミノ酸はよく化学調味料とも呼ばれていますよね
代表選手は、A社のひと振りすると美味しくなるあの白い粉です。
アミノ酸はめんつゆ、顆粒だし、様々なタレ、ラーメン、スナック菓子、カレールー…など書ききれないほど色々な加工食品に入っています。
アミノ酸の成分
添加物であるアミノ酸の場合、ナトリウムなどと結合した化学物質(グルタミン酸ナトリウム)となります。
グルタミン酸ナトリウムという成分が、食べた瞬間強いうま味を感じさせます。
(『アミノ酸等』とまとめられている場合、グリシン・核酸・有機酸なども含みます。)
アミノ酸はどうやって製造されているの?
アミノ酸の製造方法は現在メジャーなのは発酵法で、他に、酵素法・抽出法・合成法などがあります。
- アミノ酸の製造工程(発酵法)
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- 糖蜜やでんぷんを、他の栄養素(?)と発酵タンクに入れ発酵液を作ります
- この発酵液にグルタミン酸生成菌(酵母)を入れます
- 菌が糖分をエサにして、グルタミン酸が放出されます
- グルタミン酸を(何かを入れて)酸性にすると結晶化します
- 結晶が含まれるグルタミン酸溶液に、水酸化ナトリウムを結合させ、グルタミン酸ナトリウムにします
- このグルタミン酸ナトリウム溶液をろ過・乾燥・精製して粉末状のアミノ酸が完成
昔はもう少し複雑な『合成法』で作られており、そこから化学調味料と呼ばれる様になりました。
後に安全性が指摘される物質を使っていたことがわかり、今は発酵法が中心になりました。
しかし、手元にある加工食品のアミノ酸が、4つの方法のうちのどれで作られているかまでは消費者には届きません。
酵母エキスとは

酵母エキスとは、分類としては食品であり、うま味成分を補強する役割があります。

酵母って微生物とか菌のイメージで健康に良さそうだけど…
原料はパン酵母・ビール酵母・トルラ酵母などの酵母です。
この酵母のたんぱく質を、熱水・酵素のはたらき・自己消化などの方法で分解します。
分解により、うま味成分であるアミノ酸(グルタミン酸)・核酸(イノシン酸)などを取り出します。
酵母エキスの製造の一例です 見てみたい方はどうぞ
- 例:ビール酵母からの製造過程
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- ビール製造の副産物であるため、まず塩酸でビールの苦味を取り除きます。
- 塩酸により酸性に傾いた状態を水酸化ナトリウム(アルカリ)で中和します。
- 温度を上げて、酵母に自己消化酵素という酵素を出してもらいます。
- 自己消化酵素の働きでたんぱく質が分解されアミノ酸(うま味成分)が生まれます。
- ここまでではうま味に雑味があったり、うま味が弱いため、グルタミン酸ナトリウムも添加したりします
- 粉末状、液体状にそれぞれ加工し完成

え、上のビール酵母からの酵母エキスの製造工程見たんだけどめっちゃ化学してない???
そうなんですよ。でも「精製はしていない」ので、分類上は食品添加物ではないのです。
たんぱく加水分解物とは

椎茸や昆布やカツオから出汁を取る、鶏ガラや豚骨などからスープを取る、という行為は食材からうま味成分であるアミノ酸を引き出していることになります。
たんぱく加水分解物は、たんぱく質を含む植物性原料や動物性原料を加水分解することでアミノ酸を得られます。
加水分解には、『塩酸を用いる方法』と、『酵素分解』の2つの方法があります。
大半のたんぱく加水分解物は、塩酸を使う方法で加水分解されています。旨味が強く低コストで製造できるからです。
- 加水分解によって生まれる不純物
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この時、原料によりますがクロロプロパノール と呼ばれる不純物が、製造中に微量生成されることがわかっています。
クロロプロパノールはアルカリを用いて低減させているようです。(詳しくは農林水産省食品中のクロロプロパノール類及びその関連物質の生成)
酵素分解での処理はクロロプロパノールは発生しません。
食品加工には酵素分解でのたんぱく加水分解物のみを使うメーカーもあります。
しかし、この『植物性原料・動物性原料』とは、食品加工で余った絞りカスや、様々な部位の肉片や魚の血合いなども使われます。
要はたんぱく質が多く含まれていれば毛でも何でもよくて、アミノ酸が取り出せます。

いくらアミノ酸だけを取り出すとはいえ、なんか嫌だね…
こちらも加水分解という比較的簡単な処理で抽出されるため、添加物ではなく食品扱いとなります。
うま味調味料の何が悪いの?

私もナチュラルショップで働く前はアミノ酸なんて気にもとめませんでしたし、A社の顆粒だしには散々お世話になっていました。
どんな加工食品にも入っているので、これが普通。そう思っていました。
でも、やはり辞めてみないとわからないことって…あるものなんですよね。
食品表示ルール上の問題点
無添加をうたう商品には、アミノ酸を使わない代わりに酵母エキスを使うなど全然よくあることでした。

これなら法律上は「食品添加物無添加」になりますので…
- なんで無添加って言いたいのに堂々とそのままの原材料でやらないの?
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例えば出汁(だし)なんですが、だしパックを開発して売ろうとします。
舌がうま味調味料に慣れている世間からするとカツオと昆布だけでとった出汁じゃ味が薄い不味いってなって売れ行き悪いんです。
サバ節、焼きあご、にぼし、椎茸などをブレンドして味わいを複雑にすれば美味しくなりますが、1袋あたりの原価が高くなってしまい余計売れません。
そこで低コスト(ほんっっのちょっとの量)でうま味を足すことができるうま味調味料を添加します。
アミノ酸は世間の印象が悪いので、酵母エキスやたんぱく加水分解物を使い、無添加と表示します。
消費者は無添加を求めるけど、やはりおいしくないと売れない。
そんなところからも消費者に買ってもらうため、あの手この手で企業も必死です。

本当に無添加を求めている人にとってはちょっとがっかりする話だよね
現在では食品表示のルールが改正され、紛らわしいただの「無添加」という表示は禁止されました。
この改正はいいような悪いようなで、この無添加の文字を頼りに探していた消費者は、本当によい食品を見逃してしまうかもしれません。
からだへの懸念点
健康への懸念
通常の摂取量で健康に害を及ぼすとされていませんが、過剰な摂取は消化吸収の際に身体への負担がかかります。
添加物は輸入品が多いですが、どんな国でどの原料でどうやって作られているのか…までは追えません。
アメリカではアミノ酸をベビーフードに使用することは禁止されていますし、小さな身体の子供への影響は未知な分、やはり心配です。
アレルギー
たんぱく加水分解物は、特定原材料ではなくとも(牛肉、さば、サケ、ゼラチンなど)アレルゲンとなりうる物質が含まれます。
パッケージには原材料欄に載っていたり、別枠にアレルギーの記載があったりしますが、醤油などの調味料と違い原料が想像しにくく、確認が大変です。
味覚が鈍る
うま味調味料などの『強いうま味』に慣れてしまうと、素材のもつ本来の味に鈍感になっていきます。

私も何の知識もないままナチュラルショップで働き始めたばかりの頃の話ですが…
あるオーガニックカフェで食べたランチのおかずの味が薄く感じ、「美味しくないなぁ」とすら思っていました。(今では大好きなお店です)
それが調味料を変えて、〇〇の素などを極力使わずに過ごしていくうちに、嫌いな酢の物を美味しく感じ、嫌いな野菜まで食べられるようになりました。
これはやっぱり、添加物やうま味調味料を抜いて生活した事がある人にしかわからないことかなと思っています。
またうま味調味料は、カップラーメンのように油分・糖分・塩分が多くても、うま味でごまかされてしまい、しょっぱいはずなのに食べれてしまうということもあります。

出汁のとり方がわからない子供に
今は何でも調べれば知りたい情報が出てくる時代ですが、『知りたいと思わなければ調べない』…ですよね?

前にTVの特集番組で魚が切り身で泳いでると思っている子供も居るって見たことあるよ

なるほどね。魚はともかく、これは私の話なんですけど…
お味噌汁に使うような出汁のとり方って、母が顆粒だし使っていたのでそういうもんだと思って知らなかったのです。
(※母はもちろん出汁のとり方を知っていますが)
家庭科の調理実習で初めて鰹節お湯に放して、こして…という手順を知りました。
なんとなく覚えていますが、周りの同級生もやっぱり「味薄い」「美味しくない」とか言っていましたね。
慣れって怖いですよね。
まとめ:事実を知って賢い選択を!

私は「添加物を悪だとは言い切れない」と思ってはいますが、うま味調味料だけはできるだけ避けています。
うま味調味料のこの3つのうち、よく使われる順番は1位『アミノ酸』、2位『酵母エキス』、3位『たんぱく加水分解物』の順です。

今日スーパーで、3つとも入っているシチュールーを見かけました
さらに複合原材料(元の材料に使われている見えない添加物)を考えると、特にアミノ酸は避けきれないほど様々な加工食品に使われています。
こういったものもしっかり避けていきたい!というママは、信頼できる自然食メーカーの商品を使うのがおすすめです。
酵母エキス、かんすい、ショートニング、光沢剤…など名前を聞いて不安を覚えるような原材料や添加物も、身体の負担が小さいものを使っていたりします。
自然食メーカーは問い合わせてもトレーサビリティーがしっかりしているので、わりとすぐに回答していただけますよ。

食育の観点からも、見えるうま味調味料だけでも避けたいですね
最後までお読みいただきありがとうございました。
